2013年5月27日月曜日

日銀よ我に返れ


若葉が萌える 北海道 星置緑地











   浮かれ調子の春気分が続いていましたが、長期金利が乱高下して、日銀の「異次元緩和」にたいする不安や疑念が少し広がってきたようです。
   しかし、これはまだ序の口。国債⇒株式への乗り換えは行ったり来たりの話ですが、日銀がギャンブルのような国債買い入れを続けるなら、国債そのものの信用が揺らいできて、本格的な金利上昇が始まることは避けられないでしょう。

   5月2日の参院予算委員会の公聴会で、「アベノミクスの出口戦略はどうあるべきか?」と問われた若手の経済評論家が、つぎのように答えていました。
   「現時点で出口政策を議論しないことがまさにインフレターゲットの効果を最大限にすることの非常に重要なポイントだ。まだデフレから全く脱却していない段階で、デフレを脱却したらどうしようなんて心配する必要はない。私の師匠であるイエール大学の浜田宏一先生は言いました。グリーンの先に崖があるからといって、まだ大分手前なのにパターでゴルフをやるような人はいない。崖を心配する前にまずはグリーンに乗せることを考えなきゃいけない。余計な情報はない方がいい。現時点で出口政策を議論すること自体が時期尚早である」

 やはり、グリーンの先に崖があるのか。
 前方に崖があろうと前に進むのみ、まるで軍事的精神主義です。
 こういうときは、学者や評論家こそ冷静になってほしい。

今後の日銀の国債購入計画
大門実紀史作成

















 上図の青いラインを「銀行券ルール」といいます。
  日銀が買い入れた長期国債の残高を、銀行券の発行残高以下に抑えようと設定されていたもので、このラインをこえると日銀が国の借金の肩代わりをしていると見なされるようになります。

 日銀が国の借金の肩代わりをしていると見なされるとどうなるか。日本の国債の信用がなくなり、利回りが上がる、利回りが上がれば長期金利が上がる、長期金利が上がれば世の中全体の金利が上がって、住宅ローンとか企業の貸出しの金利も上がってしまって景気が悪くなる。あるいは、利回りが上がると、国債の利払い、国が払う利息も増えるので、国の財政を圧迫します。それが増税や社会保障の切下げにまたつながっていく。だから、この国債の信用を保つというのは大変重要なことなのです。

 アベノミクスが始まる前から、このラインを少し突破していたのですが、黒田日銀総裁はラインまで戻すどころか、一気に二倍ちかくまで国債保有を増やそうというのです。

 私が「国債の信用が下落したらどうするのか」と黒田総裁に質問したとき(4月25日参院予算委員会)、返ってきた答えに驚きました。
   「欧米の状況を見ますと、やはり大量に国債を購入して、当然のことながら中央銀行券の残高をはるかに超える国債、長期国債の保有を行っておりまして、その下で特に国債の信用が失墜しているということにはなっておりません」
 世界一の借金大国日本と欧米諸国を同列で見るとは。日本は他国とちがい莫大な借金を抱えているだけに、国債の信用維持については十分すぎるほど注意を払う必要があります。「よその国はルールはありません」など、日本の中央銀行総裁が言うべきことではありません。

 日銀には、一日も早く我に返って、中央銀行として真っ当な道を歩んでほしいとおもいます。