2013年10月20日日曜日

乱読のすすめ103-ネオリベの罠---立ちあがる女性たち

 
 








この数年、NTT北海道の転籍強要や三菱UFJ銀行の契約社員打ち切り問題で、たたかいに立ちあがった女性たちを見てきました。彼女たちの動機は、自分の処遇のためというより、こんなことが許されていいのかという思い。そこには労働者としてだけでなく、女性として、自分たちを軽く扱う企業や社会にたいする怒りがありました。
女性差別の問題抜きに労働問題は語れない。

政治家として再起不能の去り方をしたのに、再び総理に返り咲いた安倍晋三。痛快なジェンダー論で有名な社会学者、上野千鶴子さんは、新著『女たちのサバイバル作戦』(文春新書)のなかで、第二次安倍政権を「ゾンビ復活内閣」と呼び、ネオリベ(財界の短期利益を優先するネオリベラリズム=新自由主義)政権だと厳しく批判しています。

本書のなかで、上野さんは小泉政権以来の「男女共同参画」にも疑問を投げかけます。

「ネオリベ改革の『男女共同参画』」は、「男仕立て」のルールのもとの競争に、女も参入してよい、という機会均等であり、少数の女性が勝者になるかもしれないが、大多数の女性は敗者になるほかない。敗者が敗者であることに納得することが、ネオリベの競争原理を支える。しかし、もしかしたら競争のルールそのものがまちがっているのではないか。この競争のもとでは、女はハンディつきのレースに参入しており、その結果を自己責任と思いちがいさせられている」

「もともと男女平等と言うべきところを、男女共同参画と政府が言い始めたのは、自民党のオジサンたちが平等という言葉を嫌ったから。だから『男女共同参画センター』という呼び方もわたしには抵抗がある。もともと『婦人会館』とか、『女性センター』と呼ばれてきた歴史のある場所。『女性センター』は中国語では『女性中心』と訳す。これって、わかりやすい。もっとわかりやすく、『女性差別撤廃センター』と名前をつければ、センターのミッションが誰にでも誤解なく伝わる」

権力と「男社会」に迎合する女性の学者も多い中で、やはり上野千鶴子はおもしろい。