2013年10月19日土曜日

乱読のすすめ104-資本主義の謎











『資本主義の謎』(水野和夫、大澤真幸、NHK出版新書)がおもしろい。
水野さんは、証券会社をへて日大教授になられた金融の専門家。数年前のリーマンショックのとき、「朝まで生テレビ」に一緒に出演させて頂いたことがあります。温厚な方で、番組中の発言は少なかったけれど、マネー資本主義の暴走が金融危機を作り出したという認識は私と同じでした。
社会学者の大澤真幸さんは、直接お会いしたことはないけれど、日本人の倫理性の希薄さに切り込んだ『夢よりも深い覚醒へ』(岩波新書)はお勧め(本ページでも紹介したことがあります)。
本書は、お二人が、資本主義の誕生と普遍化、功罪と限界を論じながら、ポスト資本主義を模索する野心的対談です。

大澤さんはいいます。「20世紀は社会主義のような大きな物語の時代だったが、21世紀になって、(現行の資本主義システムを前提にした)『小粒な改革案』しか出てこなくなった」
水野さんもいいます。
「政府がやるべきは、あと数十年後にどういう社会システムになるかという研究。過去の価値観で、成長戦略だの『三本の矢』だのと言っているようでは先が知れている」
「中国の『春秋左氏伝』ではつぎのように言っている…国が興るときは、民を負傷者のように大切に扱う。これが国の福である。国が亡びるときは民を土芥(どかい)のように粗末に扱う。これが国の禍である。…いまの日本で民が大切に扱われているとは全く思えない。新自由主義の人たちは、個々人の努力が足りないと非難し、貧乏になる自由があるとまで言っている。このままでは人々の希望までが奪われて、いずれ滅んでしまう。21世紀のグローバリゼーションのあとの世界の制度設計をどうするか、それを示すことが、1億2千万人の命を預かる政治の責任だ」

まともな学者さんたちの間では、資本主義はますます行き詰まっているという認識が広がっています。わたしたちも、もっと未来社会論を語っていくべきときだと思いました。