2013年8月4日日曜日

乱読のすすめ83―「生き残り」といえば、すべて許されるのか














   労働者を使い捨てにするブラック企業が問題になっていますが、ある懇談会でIT企業の社長さんが、「企業は生き残りをかけてたたかっている。社員も生き残りをかけてたたかって当然」と、なかばブラック企業を正当化するような発言をしました。

   高齢者を食いモノにする偽装質屋(ヤミ金業者)も社会問題化していますが、テレビの覆面インタビューで「元・偽装質屋業者」が「世の中、騙すか騙されるかの生存競争や。騙されるほうがわるい」と開き直っていました。

   「生き残りをかけて」、「生存競争」といえば、なんでも許されるのか。
  
   生物学者の池田晴彦氏は『人間、このタガが外れた生き物』(ベスト新書)のなかで、「人間は一つの生物ではあるが、人間のように戦争したり、レイプをしたり、環境破壊をする生物はほかにいない」と指摘し、生存競争といっても、人間の場合はタガが外れているとのべています。

   さらに、人間世界とちがい、動物世界の「弱肉強食」は自然の摂理を逸脱していないとしてライオンの話を紹介しています。
   「ライオンは狩りがすごくヘタで、ヘタだからこそライオンは生きている。あまりにもうまければ、どんどんその辺の動物を狩って、ライオンが増えていくと、最後にライオンの個体数だけが増えて、狩るものがなくなる。そうしたらライオンは共食いしない限りは全滅する。狩りがヘタだということによって、ライオンは実はいつも餌がある状態になっているわけだ」
   「ライオンは腹がいっぱいになれば、つぎに腹が減るまで狩りはしない。それを知っているから、ライオンがぐうたら寝ている所でも、他の動物は、あまり警戒しないで餌を食っている。ライオンだって、強いといっても他の動物がいるお蔭で生きている。あまり無茶苦茶なことをやると、生きていけなくなる」