2013年7月31日水曜日

最低賃金引き上げー発想の転換をせよ










   今年の最低賃金をいくらにするか、国としての「目安」を決める審議が厚生労働省の中央最低賃金審議会の小委員会でおこなわれています。
   経営者側が中小企業の負担増などを理由に10円以上の引き上げに抵抗しているとのこと。

日本の最低賃金はあまりに低すぎる(図表参照)。10円どころかもっと大幅な引上げが必要です。

   大企業は内部留保があるから、引上げに対応する余裕は十分あるはず。いっぽう多くの中小企業は、賃金上げたくても上げられない厳しい経営状況にあるのは事実です。
   しかし、最賃引上げをたんに労使の対立や経営圧迫問題ととらえていては、いつまでもデフレ不況から脱却できません。最賃引上げを経済対策として大きくとらえ直し、フランスやアメリカでおこなったように大規模な中小企業支援と最賃大幅引き上げをセットにして一気にすすめるべきです。いま政府に求められているのは、8円か10円かのちまちました要請ではなく、そういう大胆な政策展開なのです。

   アメリカでは数年前から最賃引上げにとりくみ、中小企業にたいし5年間で8800億円(減税など)の支援を決定、最初の3年間で最賃を5・15ドル⇒7・25ドルへ、日本円で200円程度、一気に引き上あげ、日本の最賃額を追い越しました。

   そのとき全米1,000社の社長と重役、中小企業経営者が、最低賃金引き上げを支持する声明に署名しています。以下は、その声明文です。

   「最低賃金引き上げを支持する米国経営者・重役の声明」(2007年2月8日米国各紙報道)

   声明に署名した私たち経営者、重役は、最低賃金の引き上げを支持する。最低賃金の引き上げは、労働者にとってだけでなく、ビジネスと経済にとっても利益となる。時間5.15ドルの最低賃金では労働者とその家族の必要を満たすことができないことを、私たちは知っている。公正な最低賃金は、健全なビジネスと地域社会、経済成長の持続にとって不可欠であることを、私たちは知っている。
   私たちは、最低賃金の引き上げが地域経済を押し上げることになると、期待している。低賃金労働者は、みずから生活し働く地元でお金を使うから、ビジネスにとっても地域社会にとっても利益となる。賃金の引き上げは、消費者の購買力を高め、労働者の移動を減らし、生産性を高め、製品の品質を高め、消費者の満足度を高め、会社の評判を高め、したがってビジネスにも利益となる。全国消費者連盟の最近の調査によると、消費者の76%は「その会社の従業員の賃金がどれだけ高くどれだけ待遇がいいかということが消費者の購買に影響をあたえる」と回答している。

   州の最低賃金を5.15ドルの連邦最低賃金以上に引き上げている州では、そうでない州よりも、雇用情勢がよく、小企業の経営も良好である。財政政策研究所などの研究によると、最低賃金が5.15ドル以上の州における小企業の数とその従業員の数は、その他の州よりも増えている。最低賃金引き上げを批判する論者の予測と反対の結論になっている。前回、連邦最低賃金が引き上げられたのは1996年と1997年だが、その後、失業率が下がり、インフレも下がり、力強い成長を実現し、貧困率が下がったのである。
時間5.15ドルの最低賃金のもとで、労働者の購買力は半世紀前よりも低くなっている。1950年代の最低賃金で、力強い21世紀経済を構築することはできない。ますます多くの勤勉なアメリカ人が生活のやりくりに苦労しているとき、力強い21世紀経済を構築することはできない。公正な最低賃金こそ、私たちが労働と責任ある経営の双方を尊重していることの証となる。公正な最低賃金は、私たちの地域社会と国家の将来に対する健全な投資を意味しているのである。

      (文責は大門)