2012年4月25日水曜日

AIJ事件-もうけたのは誰だ?




   映画に出てくる詐欺師は、どこか憎めないところがある。
   映画「ペーパームーン」(1973年)は、聖書を売りつける詐欺師の男(ライアン・オニール)と、母親を交通事故で亡くした9歳の少女(テイタム・オニール)が、詐欺をしながら旅をつづけるうち、本物の親子のように絆を深めていく物語。 テイタム・オニール の名演技(アカデミー助演女優賞受賞)もあり、情感ただよう名作です。
   また、映画「スティング」(1973年)は、詐欺で日銭を稼ぐ若者(ロバート・レッドフォード)と、伝説的詐欺師(ポール・ニューマン)が力をあわせ、宿敵のギャングを大がかりな詐欺で破滅に追い込んでいくストーリー。華麗なる手口に爽快感が残ります。

   ところが、現実の詐欺師はなんと黒々とした存在なのか。とくに昨今、多発している金融がらみの詐欺は、被害が広範囲におよび手口も複雑で、その分、発覚したあとは、余計ドロドロとした欲望と卑しさを感じます。
   その典型が、中小企業ではたらく労働者の年金を消失させたAIJ事件。しかもこの事件には、浅川社長などの「プレーヤー」だけでなく、「スポンサー」がいました。

   AIJは、浅川社長が実質的に運営する二つの投資事業組合(ディバーシファイド・ストラテジー投資事業組合、シグマキャピタル投資事業組合)をつうじてITM証券を支配し、資金集めと運用をおこなっていました。
   この二つの組合に合わせて20億円、99%出資していた(昨年6月現在)のが神戸松蔭女子学院大学(神戸市)です。ITMを支配する資金は、結果的に同大から提供されていたのではないかとおもいます。
   4月24日の参院財政金融委員会での証人喚問で、私の尋問にたいし、浅川氏は「(同大が)2002年の9月から投資している」と認めました。ITMの西村社長も「かなり長い、深い付き合いがあると思っていた」とのべました。


   さらに、ITMが「自社株式の消却」をおこなった際、浅川、西村両氏、神戸松陰女子学院大学の元学長T氏、さらに二つの投資事業組合から株を、購入価格の1・7~3・9倍の価格で買い取り、莫大な利益を与えていました。これについても証人喚問の際、浅川氏、西村氏ともに認めました。

   労働者の年金を食いつぶしておきながら、一方で、出資者や関係者には「利益供与」していたのです。今後、事件そのものの解明は捜査当局が進めることになりますが、こんな理不尽が許されていいわけがありません。