2013年9月24日火曜日

乱読のすすめ98-いーちゃん、安らかに












きのうは岩手県一関市の市議選の応援。全員当選を祈りながら、帰りの新幹線に乗りました。
東北新幹線一関駅はこの2年半、いつも被災地支援の出発点となった駅でした。駅前でレンタカーを借りて、山を越え、津波に襲われた町へ何度も向かいました。

新幹線のなかで、ノンフィクション作家、石井光太さんの最新刊『東京千夜』(徳間書店)を読みました。最終章「津波に潰されて」は、宮城県名取市の達也さんと、妻のいーちゃんの話。...

若くして結婚した二人には幼い子どもがいましたが、気持ちのすれ違いが続き、達也さんはいーちゃんにつらく当たるようになり、離婚も考えました。
しかし震災の半年前に達也さんが腰を悪くしたとき、いーちゃんが献身的に介護してくれたのをきっかけに、達也さんはやり直そうと思いはじめます。
震災が起きた3月11日は、二人の関係がようやく元通りになりつつあり、長女も小学校に上がることから、今後どのような家庭を築いていくかを考えていた時でした。

津波警報が出ているのを知り、達也さんは妻や子どものことが心配になり会社を飛び出します。

いーちゃんは、津波がせまっているのを知りながら、達也さんが大事にしていたパソコン(マックブック)を、地震で壊れた家の中から探し出し、車に積んで逃げました。
いーちゃんは仲直りしたばかりの達也さんのことを何よりも優先していたのでしょう。だから彼のマックブックを運ぼうとしたのです。

しかしその数秒の遅れで、いーちゃんは波にのまれてしまいました。

なぜ、いーちゃんにつらく当たったりしたのか、どうしてもっと大切にすることができなかったのか、達也さんは自分のブログに、つぎのように書きました。

家族をふくめ今愛する人がいるなら、変なプライドや恥ずかしさにとらわれず、その人達にできる限りの愛をもって接してあげて下さい。
みなさんには俺みたいに後悔してほしくありません。
どんなに仕事や他の事で忙しくても、家族や友達を最優先に考え、自分が愛する人達と少しでも楽しく幸せな時間を過ごしていただけたらなって思います。
……
いーちゃんへ。子どもたちが優しくて立派な大人になれるように俺がちゃんと育てるからさ。だから、安心して天国から見守って下さい。
……
そして自分の使命を果たし人生を終えた時、今度はまたいーちゃんに会いに行くよ。

またね。達也。